犬山 紙子

犬山 紙子

コラムニストや、テレビのコメンテーター等で活躍する、犬山紙子さん。昨年、虐待問題が大きく取り上げられたのをきっかけに、自身でも問題に取り組み始めました。一人ひとりが今の社会に対してできること、今を生きる人が幸せに生きる方法などを、素直な視点でお話してくれました。

「こどものいのちはこどものもの」

去年の3月、目黒区で5歳の女の子が虐待で亡くなった事件があって、それが大々的に報道され、世論が動いたタイミングがありました。虐待のニュースって、それを目にしている自分も傷つくんですよね。辛いし、何もできなかった自分を責める。そして、その親に対して怒りをぶつけることで、折り合いをつけるんですね。ただよくよく考えると、親を責めるだけじゃなにも変わらない。テレビのコメンテーターとしては「変えていかなければいけません」って言っているのに、なにも動かない自分も嫌だった。それで、かなり感情的に「私は児童虐待問題に対して動かない議員を支持しません」っていうハッシュタグを作って、Twitterに投稿したんです。そうしたら、それを見た芸能の仕事をしてる友達4人が、私もやるって言ってくれたので「こどものいのちはこどものもの」という活動を、5人で始めました。

問題を風化させないために

虐待って、事件の内容がテレビでバンバン流れているときには、わーっと盛り上がります。みんな虐待をどうにかしなきゃいけない、どうにかしてよって動きが生まれる。でもそのニュースが沈静化してしまうと、みんな関心が薄れていくし、目に触れる機会も減っていく。残念ながら風化することが多い。でも私たちの強みは、一般の方々よりは沢山の人に向けて発信できること。専門家の意見を拡散したり、記者会見をしてメディアの方に来てもらったり。私たちは全員、虐待問題に関しては素人だけど、一応は知名度っていう武器を持っているから、それを使って何かできるんじゃないかと考えたんです。

こどもギフト

活動をしてみると、子どもがいるいない関係なく、どんな人たちも心を痛めていたことがわかりました。みんなと一緒の気持ちだったんです。たまたま私は、書いたり、テレビで発言できたりするポジションにいただけ。本当にたまたま、私がやった感じです。
5人のメンバーで、そんなたくさんの方の意見を厚労省に持って行きました。でも国が変わるのには時間がかかるし、その間にも虐待されている子どもはいる。他にもなにかできることはないかなと、ずーっと考えていて。そこで、ああ、お金だ!と。
尊い活動をされている方々の多くは、資金難に喘いでいます。「なにかしたいけど、なにをしていいかわからない」と考えている人々と、そういう団体を繋げるのが、知名度のある人の役割だなって、やっとわかったんです。それで「こどもギフト」というクラウドファンディングを始めました。本当にありがたいことに、全ての項目で目標を達成できました。この活動は、毎年必ずやりたいなと思っています。でもみんながクラウドファンディングを立ち上げて、どんどんお金が集まっていくのが一番の夢です。

見て見ぬふりをしていた自分

私、昔は女性の生きづらさみたいなものはほぼ、見て見ぬふりする人間だったんですね。私の最初の本のタイトル、『負け美女』っていうんですけど、今ではすごく後悔しています。本の内容は宝物なんですけれど、女の子を勝ち負けで区切っちゃうようなタイトルを付けてしまう、それくらい鈍い人間だったんです。
でも自分が尊敬できる人と話をしていくうちに、自分の中で蓋していた気持ちが、どんどん剥がれていきました。自分で主張を持って、かっこよく活躍している、生きている女性と触れ合っていくことで、見て見ぬふりをしていた自分に気づいたんです。そこから、大分変わったと思います。そして変わるためには、反省しなきゃいけないんですよね。過去に自分は、沢山の人を傷つけるようなことも言ってきたと思います。そういったことに対しては、ごめんなさいしないと、この先の活動は絶対できない。現代に生きる人の抱える生き辛さや、妊娠しながら働く、育児しながら働くことの大変さ。そもそも結婚しろ、子どもを産めっていう圧力。そういういろんなことを、私自身も感じていたから、今度はちゃんと言っていかないとなって思っています。

「休め! 遊べ!」

お母さんたちが飲み会に出ると、かなりの確率で「お子さんは?」って聞かれるんです。でもそれ、男性にも聞くの?って不思議です。私ですら聞かれるから、多分、世のお母さんたちはもっと聞かれているんだろうなと思います。もちろん、聞く人に悪意があるわけじゃないんですよ。でも聞かれてしまうっていうのは、「子供はお母さんが見るものだ」っていう前提があるから。
私、遊んだら絶対、Twitterに「めっちゃ遊んだ!」って自慢げに書こうと思っているんです。「休んでいいんだ」どころか、「休め!」って感じですよね。もう、命令形でいい気がする。「休め!」「遊べ!」っていうのを、がんばっている人たちに命令したい。特に働いている女性とか、母親とかって、みんな休むこと、遊ぶことに罪悪感があるから、それぐらい言わないと。そして、休んで遊べる社会にしないと。

幸せに生きるためには

子どもを持っていようが、独身だろうが、専業主婦だろうが、どんな道を選んでいても、その先に幸せになる方法っていうのは絶対あるというのは、これまで色んな人に話を聞いて分かったんです。じゃあどういう人が幸せなのかというと、自分を大事にしている人。 理想を言えば、自分を好きでいられたらもっといい。自分を大事にすることが、最終的に、必ず幸せに繋がるんです。そのためには、寝ないとだし、メンタルケアしていないとだし、心から笑える遊びの時間を作らないと、自分を好きではいられないです。自分を、大事に! っていうことですね。

犬山紙子 いぬやま・かみこ

仙台のファッションカルチャー誌の編集者を経て、家庭の事情で退職し上京。東京で6年間のニート生活を送ることに。そこで飲み歩くうちに出会った女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで書き始めるとネット上で話題になり、マガジンハウスからブログ本を出版しデビュー。現在はTV、ラジオ、雑誌、Webなどで粛々と活動中。2014年に結婚、2017年に第一子となる長女を出産してから、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」の立ち上げ、社会的養護を必要とするこどもたちにクラウドファンディングで支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。反面、また、ゲーム、ボードゲーム、漫画など、2次元コンテンツ好きとしても広く認知されている。